紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】
「あー……、灯ちゃん、昨日の今日じゃ身体、辛い、よね?うん、ごめん、ちょっと離れればそのうち治まると思うから、」
でもそこで、私は離れようとする和泉さんにぎゅ、としがみついて言った。
「へ、平気、です……。私、で、そうなってくれてるのが、嬉しい、から……」
「〜〜……っ!」
それは紛れもない私の素直な気持ちだったのだけど、それを伝えた瞬間に私は和泉さんに組み敷かれていて。
「……本当に灯ちゃんは……。オジサン煽るとあとが大変だって言ってるのに……」
そう言った和泉さんに濃厚なキスをお見舞いされ、同時に昨日一晩で私の気持ち良いところを的確に知り尽くした手がまたみだらに動き出し。
朝から再び甘く鳴かされることになったのだった。
ーーそれから順番にシャワーを浴び、和泉さんの用意してくれた朝食を食べ、「灯ちゃんの体力が回復したらデートしよう」と誘われて。
でも恋人になってから初めてのデートだし、顔も髪も服も可愛くして臨みたかったから、そんな心の内は伏せてただ、「身支度を整えたいから一旦家に帰らせて欲しい」とだけお願いしたのだけど。
「そのままの灯ちゃんで十分可愛いよ?」
と、何とも甘さにまみれた答えを返されてしまうから、
「そっ、そんな訳ないじゃないですか……!和泉さんのいない間にこんな私でも可愛く変われる方法を教えてもらったから、だから和泉さんの隣に立つ時は、できればそんな自分でいたいんです……っ!」
憤慨して、結局洗いざらいぶちまけるハメになった。
でもそんな私の気持ちごと、和泉さんはぎゅっと包み込んで言った。
「……僕にとっては、初めて出会った時の灯ちゃんも、今の灯ちゃんも充分魅力的だよ。でも僕のために可愛くなろうとしてくれてることが、堪らなく嬉しい。
ーーだから、今日のデートはそういうのも含めて全部、僕に任せてくれないかな?」
そうして最後に耳元でそう意味深に囁いた和泉さんに絆されて、私は最終的に手持ちのメイク道具で自分に出来る必要最小限を施し、サッと身支度だけを整えて出ることを了承したのだった。
だけど、どこへ行くとも告げられずにしばらく車を走らせまず連れられて来た建物には、とても見覚えがあった。
まるでニューヨークのアパートメントを彷彿とさせる佇まいのこぢんまりとした外観。
closedの札がぶら下がったその藍色のアンティーク格子戸のドアノブを和泉さんが引けば、そこにいたのはーー。