紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】
そうして最後にたどり着いた場所は、都内屈指の高級ホテル、ルナアーラの最上階にあるレストランの個室。
33階の窓一面から広がる青空と東京湾のコントラストは、とても爽やかで綺麗だった。
最初こそ慣れないおめかしに慣れない場所で身の置き所がなく緊張していたけれど、いつもの穏やかでスマートな和泉さんのエスコートと、ランチのコースが運ばれて来る以外は2人きりの空間のおかげでその緊張も徐々に解れ。
食事を終える頃には、もうすっかりこの非日常的な時間を楽しめるまでになっていた。
「あの、和泉さん。今日はこんなに素敵なデートをありがとうございました。何だか魔法がかけられたような気分で、夢みたいです」
坂崎さんにヘアメイクをしてもらい、和泉さんには素敵なコーディネートを選んでプレゼントしてもらって、さらにはこんなキラキラした場所で美味しい食事まで。
本当に大げさじゃなくて、魔法をかけられて舞踏会へと出かけたシンデレラの気分だ。
「良かった、喜んでもらえて。僕の方こそ夢みたいだよ、今ここで灯ちゃんとこうしていられることが」
そんな素直な気持ちをお礼に乗せて伝えれば、和泉さんが嬉しそうにはにかんだ。
「でも、出来れば灯ちゃんにはそのまま魔法にかかっていて欲しいなぁ。もうずっと、僕しか見えないように」
だけどテーブルに両肘をつき、その上に顎を乗せて複雑そうな笑みで私の顔を覗き込んでくるものだから、思わずくすりと笑ってしまった。
「……魔法なんて、かけられていてもいなくても、もうだいぶ前から私には和泉さんしか見えていませんよ?だからもし仮に魔法が解けたとしても、これから先もずっと、それだけは変わらない自信があります」
ーーこれまで、私が自分に自信を持てないせいでこの人のことを散々待たせていっぱい不安にさせてきてしまったけれど。
その分これからは、この人が不安なんて1ミリも感じる暇がないほどに、言葉で、態度で、私の気持ちをたくさん伝えていきたいと思う。
"僕はこれからも灯ちゃんにどストレートに気持ちを伝えるけど。鬱陶しくなったら今みたいにウザいって怒ってくれていいよ"
いつかのデートの時、和泉さんが言ってくれたセリフ。
今度は私が言われちゃう日が来ちゃったりして、なんて、そんな未来を想像したらついふふ、と隠しきれない笑みがこぼれた。