紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】

「……あー、もう。灯ちゃんは本当に無自覚天然娘で困る……。誰も見てないから、そっちに抱き締めに行ってもいい?」


言いながら、和泉さんは私の答えを待たずにすでに腰を浮かせてこちらへ向かって来る。


「それ、私が断らないの、分かってて聞いてますよね……」

「はは、うん、まあね」


そういたずらっぽく笑いテーブルを回り込んで私の元へ辿り着いた和泉さんは、私を後ろからギュッと抱き締めた。


「ーー灯ちゃん。改めてこれから僕と、正式にお付き合いしてくれますか?もちろん、結婚を前提として」


背後から優しく響く、甘さと強さをたたえた不意打ちのそれに、私はひゅ、と息を飲む。


「はい……っ!」


でも迷わず即答した私を、和泉さんはもう一度強く抱き締めてから、今度は私の横に(ひざまず)く。


そして私の左手を取り、その薬指を自身の親指でそっと撫でて口を開いた。


「ありがとう、灯ちゃん。でもなるべく早くお嫁さんにもらうつもりだからーー、」


言いながら和泉さんはポケットから出したターコイズブルーの小箱をパカっと開け、そこから取り出したそれを、私の薬指にスッと嵌めた。


「ーーここは、予約させてもらうね?」


ーー日の光を浴びてそこで輝くのは、ツイストしたデザイン部分に小さなダイヤが3つあしらわれた、シンプルで華奢なピンクゴールドのリングーー。


……どうしよう。

昨日からもう、幸せが飽和状態だ……。


「〜〜……っ、こ、んなのっ、いつの間にっ……」

「……内緒。これはまだペアリングだけど、これから先の灯ちゃんの未来、全部僕が貰うから。だからこれは、灯ちゃんはもう僕のものっていう、シルシ」


和泉さんがイタズラっぽく笑う。


ーー未来への、確かな約束。

それを今、この人と交わせていることがとても嬉しい。


「……私も、付けていいですか?和泉さんは私のものっていう、シルシ……」

「喜んで」


柔らかい笑みを浮かべてそう言った彼は、私に左手を差し出した。


私は小箱の中に残っていたシルバーのリングを取り出して、その手をそっと握る。


「……和泉さんの未来も全部、私に下さい」


それを薬指に嵌めながらそう言えば、彼は愛おしそうに目を細め、


「返品は不可だからねーー」


下から、私の唇を掬うように攫っていったーーーー。


  




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