紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】
「……うん!やっぱり似合います、灯さん!ほら」
珠理ちゃんが可愛らしいコンパクトミラーをポーチから出して、そこに私の顔を映した。
「あ、ほんとだ、全然紫じゃない……」
似合うか似合わないかは全然分からないけれど、あんなに紫だったそれは青みがかったピンクみたいなカラーになって、私の薄いメイクの顔にも変に浮くことなく自然なツヤと血色の良さを演出してくれていた。
「これ、灯さんにあげますから、これからはランチの前にちゃんと塗って行って下さいね?」
「いやぁ、でも食事したら取れちゃうし……」
「大丈夫です、これティントタイプなんで」
「……ティ、ティ……?」
もはや宇宙語だ。さっきからさっぱり意味が分からない。
「ふふっ、ティントです、灯さん。普通のリップより落ちにくいんですよ。まぁもし落ちたら化粧室で食後に塗り直して欲しいですけどね?」
なんて笑いながら私の手にそのリップを握らせる。
「さ!そろそろ行ったほうがいいですよ!後でイケオジが灯さんの変化に気付いたか、教えて下さいね!」
そう悪戯っぽく笑った珠理ちゃんにハッ、時間!となり、私は急いでオフィスを出たのだった。