紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】
「それあんま飲まねーから分からんけど、何かプルタブを90度に立てて飲むといいらしいって聞いたことある」
「え、それはプルタブを開ける前に聞いときたかったヤツ……!今から90度にしても間に合う?………あ、折れた!」
「………。」
「………佐原くん、つぶりんみかん買ってあげようか?」
「オレに試させようとすんな」
再びへら、と笑って誤魔化せば、ふはっ、と吹き出し肩を揺らして笑うイケメン。
あ、意外に笑う人だ、佐原くん。
なんて思いながら、結局そのまま取り留めのない会話をしながらお互いが飲み物を飲み切るまで、私たちは何となくそこにいた。
途中会話が途切れて、研修棟の中庭に聳えている桜の木から花びらがハラハラ散っていく様を2人でただ眺めているその沈黙も、全然嫌な感じはしなくて。
むしろまるで世界に2人だけ、みたいなその空気は、とても居心地が良かった。
ーーーーだけど、今の私たちの間に、あんなに初々しくて静かで穏やかだった空気はもう、1ミリも存在しない。