紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】




 
「……岩井、岩井!今のうちに私にも追加でカシオレ頼んで!」

「え?でも中村、1杯以上飲んだらアイツが、」

「……おい、オレの見てない隙に何2杯目飲もうとしてんだ。却下。岩井、中村はウーロン茶で、オレはハイボールな」
 
「……ほら、来た……」

「……くっ……!戻って来るの早くない?ちゃんと出してきた!?」

「何てこと聞くんだお前は……。ちゃんと出して来たわ」


入社して以来、今のところ2ヶ月に1回のペースで開催されている同期会。

金曜日の夜、集まれた15人ほどで毎度お馴染みの海鮮の美味しい居酒屋のお座敷で、それは今日も今日とて開催されていた。


一緒に飲む時は絶対私に1杯以上飲ませない佐原がトイレに立った隙に、この同期会の幹事である岩井にこっそり追加注文を頼んだのに、思いの外早く戻って来てしまった彼に見つかりあっさり却下されてしまう。

無念……!


「毎回思うけど佐原って、中村の保護者か何かなの?」

「あいにく、こんな手の掛かる娘を持った覚えはありませんが?」

「こっちこそ、こんな口うるさい父親持った覚えありませんが!?」


私の隣に腰を下ろし、緩ーく眉間に皺を寄せて残りのビールを煽ったその横顔にそう言い返せば、


「ははは、ほんと仲良いなぁーお前ら」


と、岩井がケラケラ可笑しそうに笑った。




ーーーーそう。今の私たちの間には、あの時の、初々しくて静かで穏やかだった空気はもう1ミリも存在しないけれど。

その代わり、賑やかで、騒々しくて、でも不思議と居心地の良さはあの時と変わらない、そんな空気感があって。


それはそれでまぁ悪くないんだよなぁ、と、あの時と同じ整ったその横顔と喉仏を見つめながら、そう思ってしまう私がいるのだったーーーー。





another storyへ、続くーーーー????



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