紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】
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昼間、珠理ちゃんに言われた時は恥ずかし過ぎて無理……!なんて思っていたくせに、和泉さんが喜んでくれるなら頑張ってみようかな……?と考えを改めた単純な私は、一大決心をして彼の帰宅を待っていた。
【これから帰るよ】と連絡を貰い、十九時を回った頃カチャ、と鍵の開く音がしていつものようにパタパタとリビングから玄関まで駆け寄って来た私を見て、和泉さんがふわっと笑った。
「ただいま、灯ちゃん」
「おっ、お帰りなさい!……きょ、きょ……っ」
「?」
「きょっ、今日!珠理ちゃんとランチに行ったベーカリーカフェでいただいたパンがとっても美味しかったのでいくつかテイクアウトして来たんです!和泉さんの好きなクロワッサンもあるので、明日の朝、一緒に食べましょう!」
「はは、よっぽど美味しかったんだね。それは楽しみだな。うん、じゃあ明日はせっかく買って来てくれた美味しいパンをちゃんと味わって食べるために、可愛い灯ちゃんを堪能する〝あと五分〟の時間はきっちり守らないとね」
「……!ゆっ、夕飯!用意して来ます!」
……ダメだった……!和泉さんが帰って来るまで夕飯の支度をしながら何度も名前を唱えてシミュレーションしていたのに、いざ玄関で本人を前にしたら全然ダメだった……!
しかも、あのセリフ……!何だろう、何だか勝手に返り討ちにでも遭った気分だ……。
一日を終えてもなお一分の隙もなくきっちりと着こなされていたスーツのネクタイを緩める仕草に得も言われぬ色気を感じながら、自分のポンコツ具合に私は内心ガックリと肩を落とした。