紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】
「きょっ、恭加さん!……あっ、よっ、呼べた……!」

「……あー、もう。可愛すぎる……」


呼べたことに安堵した私はその瞬間、横からぎゅうっ、と音のしそうなくらい強く和泉さんに抱き締められてしまい、同時に手に持っていたグラスの中の貴腐ワインがピチャン、と波打った。


「いっ、和泉さんっ……⁉︎」

「あれ、戻っちゃった。ねぇ灯ちゃん。今日、僕の名前呼ぼうと頑張ってくれてたでしょ?」


少しだけ身体を離して、心なしか少し艶を帯びた瞳で優しく覗き込まれ私の肩が跳ねる。


「うぇ……⁉︎どっ、どうしてそれを……⁉︎」


ズバリ図星を指されて視線をウロウロと彷徨わせながら聞けば、「何となくそうかなぁと思ってたけど、今ので確信した」と少し面白そうに答えた和泉さんが、多分今赤くなっているであろう私の左耳をそっと撫でた。


「ひゃっ……!」

「どうして呼ぼうと思ってくれたの?」


彼は、そのまま私の耳をくすぐるように唇を寄せて言葉を紡ぐ。


「……き、きっかけは、実は珠理ちゃんに〝結婚を前提にお付き合いして同棲までしてるのに、名字呼びなんて他人行儀過ぎます!〟って言われたからなんですけど……。でも、名前で呼んだら和泉さんどんな顔するかな、喜んでくれるかなって考えたら呼んでみたくなって……。って、なかなかすんなり呼べませんでしたけど」


へへ、と照れ隠しに笑えば、和泉さんが今度は耳から頬へ手を滑らせ、私の唇にひとつ、軽いキスを落とした。


「うん。呼ぼうとしてるのに呼べなくて、しゅんとしてるのがすっごく可愛くてどうしようかと思った」

「うっ……!全部バレバレだったんですね……?」


は、恥ずかしすぎる……!
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