紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】
「ごめん、灯ちゃん!せっかくの2人でデートなのに、僕つい本に夢中になっちゃって!」
それからしばらくして慌てた様子で私のところへやって来た和泉さんは、両手を合わせて謝った。
時計を見ていた訳じゃないからあれからどのくらい時間が経っていたかは分からないけれど、和泉さんの様子から多分そこそこの時間は経過していたのだろう。
でも私も割と本屋さんの散策を楽しんでいたから、全く気にしていなかった。
それに別行動にしたのは私の方だし。
「え?全然謝ることないですよ。私も私で本屋さん満喫してましたし。それに私も欲しかった本見つかったんです、ほらこれ。……あ、そうだ、良かったら買った本、後で緑地で一緒に読むのどうですか?」
我ながらいいこと思いついたなぁと頬を緩ませながらそう提案すれば、
「〜〜……っ、本当にもう、灯ちゃんは………」
和泉さんは困ったように眉をハの字に下げる。
「あ、ひょっとして本買ったら帰る感じでした?それならそれで………」
「まだ帰るつもりはありません。緑地で読書、最高です」
即答だった。何なら食い気味に被せられた。
それにきょとんとしている私の手からひょい、と本を抜き取った和泉さんは、空いている方の手で私の手を握り歩き出す。