紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】

和泉さんの"お願い"は帰りでよいと言うので、
私たちはまた木陰にレジャーシートを広げ並んで座り、二言、三言言葉を交わしてそれぞれ木にもたれながら本の世界に入る。

2人でいるけどお互いがお互いに干渉しない。

会話がなくても気まずくない。

和泉さんとのこういう距離感が、やっぱりとても心地良い。

同時にお菓子に伸ばした手がぶつかった時には、顔を見合わせて笑い合って。

それからお互いまた本の世界へ戻る。

何だろう。和泉さんと一緒にいる時のこの空気感が、私はとても好きだと思う。

私たちの周りには、すごく穏やかな時間が流れていた。


ーーーー
ーーー
ーー



「ーー……灯ちゃん。灯ちゃん?」

「ーー……ん……」


ゆらゆらと、海に浮かぶ小舟のように揺蕩(タユタ)っていた意識が徐々に浮上する。


耳障りの良い低音に導かれるようにゆっくりと目を開ければ、上から思いの外至近距離で私を覗き込んでいる和泉さんの顔がぼんやりと見えて、驚く。


「わっ……⁉︎」


和泉さんのバックには、先程までは透き通るような青だったはずなのにいつの間にか綺麗なオレンジ色に染まる空が広がっていて。

昼間とは違う、少し涼を含んだ風が頭上の木の葉と私の頬を撫でていく。


「おはよう、灯ちゃん」

「……えっ⁉︎あれっ、嘘……⁉︎」


柔らかく微笑んだ和泉さんを前に、そこでようやく状況を把握した私は慌てて飛び起きた。それと同時にパサリと何かが落ちる。
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