紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】
「……あ、えと、はい……、それは全然……」
「それと、出来れば平日もお互い都合がつく時は、仕事終わりに会えたら嬉しい。……って、これじゃあお願いが2つになっちゃうね」
くしゃ、と襟足を掻いた和泉さんが苦笑した。
「……い、いえ、1つでも2つでも……。私仕事終わりに予定入るとかほとんどないので、和泉さんが忙しくなければ……」
「……ありがとう。……じゃあ、また連絡するね。今日はゆっくり休んで」
戸惑いの中、何とかそう答えた私にふわっと微笑んだ和泉さんが私の頭をくしゃりと撫でる。
その時、なぜだか胸の奥がきゅっと苦しくなった。
だからドアを開け、降り際に私は思わず言ってしまっていた。
「あのっ……!」
「ん?」
「和泉さんのこと、そういう意味で好きかどうかはまだよく分からないんですけどっ。でも私、和泉さんと2人で過ごす時間はとても好きだなぁと思っています……!」
「灯ちゃん……?」
「それとこの3ヶ月、お試しのお付き合いをしながら私は私なりに和泉さんのこと、ちゃんと真剣に考えようと思っているので……!改めて3ヶ月間よろしくお願いします!今日は、私もとても楽しかったです!ではまた!」
一息に、言うだけ言ってバタン!とドアを閉めた。
ウィンドウ越しにさえもまともに和泉さんの顔を見ることは出来ず、ぺこり、と会釈だけしてあとは振り返らず一目散に階段を駆け上がる。