無
第一章 始まりという名の無
電話①
「今夜、空いてる?」
「まだはっきりとは言えないけど、仕事が片付けば、大丈夫」
僕はその時、営業から会社へ戻る途中だった。
彼女は少し悩んでから答えた。
「仕事が終わったら、電話をもらえる?今日は早く帰れそうだから家にいるわ」
分かったとだけ答えて、電話は終わった。
梅雨に入ったばかりで、どんよりとした雲空が広がっていた。
会社に戻ると、湿気とタバコの匂いで、ここも雲空が漂っていた。
「おかえり。帰って早々で申し訳ないのだが…この資料を今日中に作ってもらえないだろうか」
部長はデスクに山積みされた資料の中から、それを器用に取り出し僕の前に出した。
今日はただでさえ帰り時間の目処もたたないし、久しぶりに彼女とも会いたかった。
「すみません、今日は僕もやることが多くて…明日ならできるかもしれないのですが…」
部長はため息をつき、分かったとだけ言って戻って行った。
時刻は17時をまわっていた。
太陽が雲空から顔を覗き出し、水たまりに反射していた。
外は学生や主婦、サラリーマンが行き交っていた。
仕事が落ち着く頃には20時を回ろうとしていた。
部長は今日はもう限界だと言わんばかりの顔つきで、お疲れとだけ言い帰って行った。
周りは僕を含めて3人だけになった。
誰もがパソコンを見ては時計を見ての繰り返しだった。
ひとまず彼女に電話をしようと一旦部屋を廊下に出た。
「今から帰ろうと思う」
「じゃあ、私も今から準備する。会社を出る時、また電話をくれる?」
「オッケー」
同僚に挨拶をして僕は会社を出た。
「今、出たところだよ」
「今から私も行くわ。」
我々は新宿駅で待ち合わせをして、歩いて15分ほどの居酒屋に入った。
1ヶ月ぶりに会った彼女は、髪を短くしピンク柄のロングスカートに白いシャツ、赤のコンヒールとシンプルな格好だった。
「先にビールを頼んでもいい?」
彼女はそう言うと、近くの店員を呼び注文した。
「今日は仕事が早く終わったんだね?」
うんと言って彼女はジョッキ半分まで飲み干し頷いた。
「今日は疲れたよ。突然雨は降り出すし、営業先の社長から娘の反抗期に関して永遠と話を聞かされるし」
そう言うと、彼女は微笑んで枝豆を食べ始めた。
「まだはっきりとは言えないけど、仕事が片付けば、大丈夫」
僕はその時、営業から会社へ戻る途中だった。
彼女は少し悩んでから答えた。
「仕事が終わったら、電話をもらえる?今日は早く帰れそうだから家にいるわ」
分かったとだけ答えて、電話は終わった。
梅雨に入ったばかりで、どんよりとした雲空が広がっていた。
会社に戻ると、湿気とタバコの匂いで、ここも雲空が漂っていた。
「おかえり。帰って早々で申し訳ないのだが…この資料を今日中に作ってもらえないだろうか」
部長はデスクに山積みされた資料の中から、それを器用に取り出し僕の前に出した。
今日はただでさえ帰り時間の目処もたたないし、久しぶりに彼女とも会いたかった。
「すみません、今日は僕もやることが多くて…明日ならできるかもしれないのですが…」
部長はため息をつき、分かったとだけ言って戻って行った。
時刻は17時をまわっていた。
太陽が雲空から顔を覗き出し、水たまりに反射していた。
外は学生や主婦、サラリーマンが行き交っていた。
仕事が落ち着く頃には20時を回ろうとしていた。
部長は今日はもう限界だと言わんばかりの顔つきで、お疲れとだけ言い帰って行った。
周りは僕を含めて3人だけになった。
誰もがパソコンを見ては時計を見ての繰り返しだった。
ひとまず彼女に電話をしようと一旦部屋を廊下に出た。
「今から帰ろうと思う」
「じゃあ、私も今から準備する。会社を出る時、また電話をくれる?」
「オッケー」
同僚に挨拶をして僕は会社を出た。
「今、出たところだよ」
「今から私も行くわ。」
我々は新宿駅で待ち合わせをして、歩いて15分ほどの居酒屋に入った。
1ヶ月ぶりに会った彼女は、髪を短くしピンク柄のロングスカートに白いシャツ、赤のコンヒールとシンプルな格好だった。
「先にビールを頼んでもいい?」
彼女はそう言うと、近くの店員を呼び注文した。
「今日は仕事が早く終わったんだね?」
うんと言って彼女はジョッキ半分まで飲み干し頷いた。
「今日は疲れたよ。突然雨は降り出すし、営業先の社長から娘の反抗期に関して永遠と話を聞かされるし」
そう言うと、彼女は微笑んで枝豆を食べ始めた。
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