第二章 終わりという名の無

掃除機①

掃除機も以前に比べると性能が良くなっていた。

関心しながら見ていると、「最近入ってきたばかりで最新モデルなんですよ」と店員さんが話しかけてきた。

掃除機を買い替えるつもりもなかったので適当に相槌をうって聞き流していた。

調理器具コーナーに安くて丈夫なまな板が売っていたので買うことにした。

支払いを終えると、店員はニッコリとお礼を言い、見送ってくれた。

笑顔も素敵だった。

しばらくすると葉月から電話があり、駐車場で待ち合わせをした。

彼女は紙袋を1つ持っており、どこか満足気に見えた。

「綺麗なお姉さんたちとは出会えたのかしら?」

彼女は運転しながら、前をまっすぐ見て聞いた。

「たくさん出会えた」

そう言うと、「じゃあ私のおかげだね。今日の夕飯は美味しい物を食べさせてもらわないと」

彼女は得意げに言った。

彼女のマンションに車を停めて、近くの居酒屋に入った。

ビール2杯、焼き鳥を3本ずつ注文した。

ここでもお通しは枝豆だった。

彼女は買い物中のことを僕に話した。

あの服も可愛かったけど私には似合わないとか、あのネックレスが欲しかったけど自分のファッションには合わないとか。

僕は女性のファッションに疎かったので、ほとんど分からなかった。

「ところで綺麗なお姉さんとは何人出会えたの?」

「指で数えきれないくらいかな」

そう答えると彼女は「私は何番目になる?」

と聞いてきたので、「みんな同率一位だよ。僕には甲乙つけがたい」と答えた。

実際にどうでもいい質問だったが、あまり喋らない僕に彼女が気を利かせてくれたのだろう。

「今朝は嫌でも私の横で寝かせるべきだったわ」

彼女はそう言って上を見た。

僕は新しく買ったまな板の話をしたが、彼女はあまり興味がなさそうだった。むしろ、彼女の方が調理器具には詳しかったので、何か言いたそうにしていたが黙った。

追加の焼き鳥とビールを注文した。

他にも卵焼きやサラダ、イカの一夜干しを注文した。

いたって普通の食事だった。
< 5 / 8 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop