NIGHT&KNIGHT
dark
「まーた吸ってら」
「……不法侵入だ」
ベランダから振りかえった視線の先。
ぐちゃぐちゃに散らかったワンルームの中心に立っていたのは6つ上のよるくん。
「不審者」
「その不審者に合鍵渡してるのは誰だよ。つーかお前が呼んだんだからな」
てのひらに乗せた鍵をかちゃりと鳴らして、彼は深く長く息をはきだした。
肌寒いというのにうっすらと汗をかいている。
「あのね。夜中に呼び出すのは百歩譲っていいとして、もーちょい違う言い方はないわけ。だんだんたち悪くなってきてんぞ」
「うん」
「うんって、お前なぁ」
よるくんが肩をすくめながらベランダに出てきた。
季節はもう桜が散りきった頃。
だけど夜はまだTシャツ一枚じゃ寒かった。
鼻をずず、と啜っていると、よるくんが自分の着ていたパーカーをわたしに羽織らせた。
そのときふわりと鼻先をくすぐった香り。
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