NIGHT&KNIGHT
「ったりめーだろ」
いつのまにかよるくんは煙草を落としていた。
ダークエスプレッソのキャンディの横に、まだ半分ほど残って燻っている煙草がちりちりと短くなっていく。
「お前が生きてて迷惑だと思うやつなんか、誰もいねーよ」
涙が止まらなかった。
それはさっきまでは煩わしかった。落ちるたび心に穴があいていくようだった。
「寝れなくてもいい、泣いたっていい、できなくてもいい、弱くってもいい」
だけどいまは違う。
心に広がる波紋はどこまでも透き通っていて、煌めいていて。
わたしの真っ暗だった闇に星を散りばめていく。
「大丈夫。大丈夫。なにも心配いらねえよ、あさひ」
とん、とんと一定の速度で撫でられる背中。
小さいころは怖かった大きな手は優しくて、
「そんなことでお前を嫌いになったりはしない」
「──────……うん」
どこまでも、あたたかかった。