NIGHT&KNIGHT
「それはだめ!わたしが舐めたやつだし」
「落ちたやつってのはいいんだ」
「なにか作るよ。なにがいい?」
「えっじゃあビーフストロガノフ」
「明日になってもいいのなら作るけど」
「うそうそ。軽食ならなんでもいーよ」
なんて言いながら部屋に入ろうとしたときだった。
ガタッと仕切り板の向こうから物音がした。
とっさによるくんがわたしの前に出る。
お、怒られる……!
「あ、あの。大丈夫ですか?」
だけど予想に反して聞こえてきたのは、どこか控えめな女性の声だった。
姿は見えないというのに、わたしはあわてて頭を下げた。
「は、はい……!あの、夜分遅く、本当にお騒がせして申し訳ありません……ご迷惑をおかけしました」
「いえいえ、そんな!気にしないでください」
気を遣ってくれているのだとしても、そう言ってくれたことにほっとする。
お隣さんは「あの」と、まだなにかを言いたそうに声をあげた。
「微力ですが……私でよければ、いつでも頼ってくださいね」