NIGHT&KNIGHT
唇に押しつけられるそれを、しかたなく受け入れるために口を開く。
押し込まれたそれはダークエスプレッソ味。
わたしが昔からよく舐めていた味だった。
「美味いだろ?」
「……うん」
「お前は昔っから大人ぶってたよな」
無意識に歯を立ててしまったらしい。
がりっという音と共に、苦い欠片が舌の上に落ちた。
「まーあの状況じゃそうなるわな。背伸びしたまま、大人ぶったまま、お前は大人になっちまった」
ちびなのにな、と馬鹿にするように頭を叩かれる。
ばしばしと遠慮のない手を振りはらった。
「自分の気持ちを言わない。周りの大人にも遠慮する。正直、気味悪ぃなって思ってたよ」
またしても懲りずに手が伸びてきた。
振りはらおうとしたら、その腕ごと身体が引き寄せられて。
わたしは、よるくんに頭を抱かれていた。
引き剥がそうとしてもびくともしない。
むずかるわたしを、よるくんは猛獣でも押さえ込むようにもっと強く掻き抱いた。
「はじめて呼び出したときさ、お前、俺になんて言ったか覚えてる?」