NIGHT&KNIGHT


「……覚えてない」

「夜に呑まれるって。俺に泣きついたんだよ」


……覚えてる。ほんとうは、覚えてる。



いつからだろう。


気づいたら夜に眠ることができなくなって、薬を処方してもらうようになって、それでもなかなか眠れなくなって。


どんどん増えていく錠剤、どんどん長くなっていく夜、どんどん落ちていく自分。


なにか決定的な出来事があったわけじゃない、高卒で雇ってもらったマッサージの仕事がうまくいってないわけでもない。



それでも毎日が、夜になるたびに、不安で不安でしかたなかった。


だったらもう原因なんて一つしかないじゃないか。




──────わたしが悪いんだ。



夜に眠れないのは、そのかわりどうしても堪えきれなくて昼に寝てしまっているから。


人生がうまくいかないのは、わたしがうまく立ち回れないから。


不安になるのは、わたしが弱いから。


わたしが弱いから、弱いから……








「なさ……ごめんなさ、ごめんなさい……っ」


< 4 / 16 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop