NIGHT&KNIGHT
「……覚えてない」
「夜に呑まれるって。俺に泣きついたんだよ」
……覚えてる。ほんとうは、覚えてる。
いつからだろう。
気づいたら夜に眠ることができなくなって、薬を処方してもらうようになって、それでもなかなか眠れなくなって。
どんどん増えていく錠剤、どんどん長くなっていく夜、どんどん落ちていく自分。
なにか決定的な出来事があったわけじゃない、高卒で雇ってもらったマッサージの仕事がうまくいってないわけでもない。
それでも毎日が、夜になるたびに、不安で不安でしかたなかった。
だったらもう原因なんて一つしかないじゃないか。
──────わたしが悪いんだ。
夜に眠れないのは、そのかわりどうしても堪えきれなくて昼に寝てしまっているから。
人生がうまくいかないのは、わたしがうまく立ち回れないから。
不安になるのは、わたしが弱いから。
わたしが弱いから、弱いから……
「なさ……ごめんなさ、ごめんなさい……っ」