NIGHT&KNIGHT
あらためて文章を見てしまったわたしは、頬が引きつるのを感じながらへたり込む。
そして頬から血をながすよるくんを見上げた。
「そうだ……わたしが死ねば、よるくんも楽になるよね。こんな頭おかしい女に呼び出されることも、なくなるんだよ……あはは、……はは、もう死ぬことにするよ、わたし」
堕ちるとこまで堕ちていたはずなのに。
死にたいって思ったのも口にしたのも、思えば今日がはじめてだった。
ベランダの手すりに縋ると、ぎしりと軋んで耳障りな音を立てる。
なにもわたしは死にたいわけじゃない。
ただ、楽になりたいのだ。
楽になるには死ぬしかないなら、わたしはそれを選ぶしかないんだ。
さらに身を乗り出したとき、後ろから手首にふれられた。
わたしはほどかなかった。
ほどく意味がないほど、それは弱い力だったから。
「……お前がわんわん泣いてんの見たとき、俺は安心したんだよ」
大雑把で荒々しいよるくんの、やわらかなシルクのベールのような声色。
「あーこいつも泣けたんだな、って」
聞いたことがなかった、こんな声は。
「子供になれなかったあさひに、やっと子供時代が来たんだな、って」
──────俺はそう思ったよ。