NIGHT&KNIGHT
「出さなきゃ、いけなかった……?」
「言ったろ。お前は子供になれないまま、大人になっちまった。一時的に子供時代をやり直してるんだよ、いま、お前は」
子供時代をやり直してる……?
そんな、そんなの……納得できるわけない。
いつまでもこのままでいるわけにはいかない。
仕事もあるし、生活もある。
もう大人なのに子供返りなんて許されるはずがない。
それなのに……
それなのに、わたしの瞳はどんどん潤んでいく。
よるくんの言葉に呼応するかのように。
さっきとまでは違うものが、どんどん、込みあがってくる。
「すこしくらい、戻っちまえ」
「……なんで、」
「いいよ」
ぱっ、と。
よるくんの手の中から現れた棒状のもの。
「いいよ、あさひ」
口に広がったのは、やさしくて、甘酸っぱい、────子供のような味。
なんの味かわからない。
だってそれは、わたしがいままで一度も食べたことのない味だったから。
子供にとっては馴染み深い味なんだろう。
だけどわたしは、それを知らなかった。