消えないで…僕の初恋
人気者を好きでいることって
しんどいんだなぁ。
悩みが無さそうに浮かぶ
雲を眺め
ため息をこぼした、ちょうどその時
「なぁ、姫野」
突然降ってきた低い声に
私の肩はビクリと跳ね上がった。
「ひゃっ?」
いきなりだったから
肩上の内巻きの髪も
一緒に飛び跳ねちゃった。
「わりぃわりぃ。
驚かせちゃったか?」
私の瞳に映ったのは
わりぃと連呼しておきながら
悪びれた様子もなく笑っている
田辺先生。
クマみたいにガタイがいい
うちのクラスの担任。
高校3年間、私の担任。
付き合い長し。
はぁぁ~ぁ。
声をかけてくれたのが
オルゴールみたいに品のある
声の持ち主
渚くんだったらよかったのに。
がっかり感が
つい顔に出てしまう。