消えないで…僕の初恋


「お昼食べにガーデン行くぞ」


僕の首に
腕を回してきた滝川君に

僕は弾むような返事を
返したけれど



「ねぇ由奈、どうかした?
 朝から変だよ、笑顔ないし」


「田辺が結婚するって聞いて
 落ち込んでるとか?」



教室の真ん中の席で
結城さんたちが

姫野さんの顔を
心配そうに伺っているから
僕も気になってしかたがない。



その時

うつむいたままの姫野さんが
ボソッとつぶやいた。


「私…失恋した…」って。



消えそうなほど、弱々しい声。



でも僕の耳は

大好きな人のどんな小さな声も
聞き洩らさないようにできているから

聞き間違いじゃない

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