消えないで…僕の初恋
「渚くん
亜美さんと仲いいし……」
「本当に誤解しないで。
僕たちは家が隣同士なだけで」
「登下校も一緒でしょ?」
「それは……
僕なりの罪滅ぼしなんだ」
痛々しい瞳を揺らす渚くん。
重いため息を吐くと
窓の外を眺めだした。
「亜美ね、中2の時
バスの中で
誘拐されそうになったんだ」
「誘拐?」
「男子大学生4人に囲まれて
体を触られて。
次の停留所でバスから降りろって
脅されてさ」
……酷すぎ。犯罪だよ。
「中学の時の僕たちは
一緒にいるって感じじゃなくて
顔を合わせれば話すくらいだったんだ。
だから同じバスに乗っていたのに
離れた席にいた僕は
亜美の異変に気づかなくて
亜美がバスを降りたって
気付いたのは
バスが停留所から動き出した後で
男たちに囲まれて
恐怖で涙を流す亜美と
目があったんだ」
「それでどうなったの?」
「僕もうパニックになっちゃって
バスの運転手さんに
必死に助けを求めたよ。
乗客の大人たちも一緒に
亜美を助けに行ってくれたから
未遂で終わったんだけど
亜美はその一件から
一人でバスに乗れなくなったんだ」