もしも半分生きた人生をやり直すことができたら。
ハイツの入り口に辿りつくと、タイミングを狙ったかのように、また雨が降ってきた。
缶チューハイ片手に余裕のわたしは、夜空を見ながら1口お酒を飲みこんだ。
関口から連絡が入る。
スマホのディスプレイに途中まで文章が表示される。

【関口:お疲れ。浜根に紹介したいひとい】

この時のわたしはもうほとんど泥酔状態で、一人で歩こうとしてもフラフラして千鳥足となっていた。
コンビニの前でも座り込んでから出発したし、ハイツの入り口前でも、正直座り込んだ瞬間、寝てしまいそうだった。
呂律は回っていなかったし、意識がしっかりしていなかった。
やっとの思いでオートロックを解除し、ハイツの入り口に入ることは成功した。
とりあえずは自分の部屋の中に入って、一息ついてから関口からの連絡を見たいと思い、ハイツの階段をあがる。

「五階ってしんど。 やばい。もうフラフラだ。あと一段だけ・・・はあ、あっつ・・・」

さすがに飲みすぎたことを後悔しながらも、左足に力を入れた。

その瞬間、
わたしは雨に濡れた階段で足を滑らせる。

「・・・やば」

この時、感覚としてはスローモーションで、身体が宙を舞っているような感覚に襲われる。
しかし、実際は、身体が後ろに倒れるように崩れていく。
手すりさえも掴めなかったわたしはそのまま後頭部を強く打つ。
薄れていく意識の中で、覚えていたのは“痛い”と“吐きそう”。
その数秒後に、“寒い”という感覚だった。
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