もしも半分生きた人生をやり直すことができたら。
用事を済ませて靴箱に向かうと、上履きのままの紫月がいた。
なぜかその姿にひどく苛立った。
「しー、靴履いときなって言ったじゃん」
「あ・・・ごめん。お腹痛くなっちゃってトイレしてたら・・・思ったよりゆっちゃん早かったんだもん」
「はいはい、またわたしの所為ね」
紫月の足に靴を履かせる。
紫月のそういうところが嫌いだった。
当たり前のように靴を履かされるな。
そして、囚われているかのようになぜか当たり前のように手を貸す自分も大嫌いだった。
「・・・・紫月、靴自分で履きな」
「えっ」
「片方履かせたし、もう片方は自分でやりな」
「でも・・・」
「いつもお母さんに履かせてもらってるの目の前で見てたでしょ。自分で履けなきゃ成長できないし、遅いなら、お姉ちゃん先帰るからね」
冷たく言い放ち、そそくさと帰ろうとする。
もうこの時から、同じ空気を吸いたくない程、紫月を嫌っていた。
異常なまでに過保護に育てられている紫月が気持ち悪くて仕方なかったんだ。
「待ってよお姉ちゃん」と小走りで追いかけてくる紫月になぜかデジャブを感じた。

わたし、
この瞬間の
この出来事のこと、
なんか知ってる気がする。

後ろでわたしを追いかける紫月を無視して早歩きしながら、デジャブを感じるこの瞬間の記憶を辿る。

この後、何が起きたんだっけ。
すごく泣いて、すごく絶望して、すごく傷ついた出来事があったことだけは覚えてる。
なんで、泣いたんだっけ。
紫月が絡んでた。
たしか、お母さんにめちゃくちゃ怒られた。




・・・・ドサッ。


< 37 / 46 >

この作品をシェア

pagetop