もしも半分生きた人生をやり直すことができたら。
大きな音がして、振り返ると、校門から数メートル歩いた下り坂で、わたしの後ろに紫月が仰向けに倒れていた。
「え」
「うぅ・・・っうぅ」
紫月は痙攣していた。
その姿にわたしは血の気が引く。
この時、わたしは思い出した。
悲しくて、寂しい未来に進むきっかけを作ってしまう全ての始まりの出来事を。

妹の紫月は「突発性てんかん」という病気を患っていた。
母と父が最初に遭遇したのは紫月が確か3歳の頃。
診断を受けたのは5歳。
その時点で日常生活では問題無かったこと、成長するにあたって治ることもあると言われた両親は小3のわたしにも小1の紫月にも病気のことを隠していた。
その為、9歳だった当時のわたしは症状が出た場合の対応方法を母から聞いておらず、後ろを振り返ると、仰向けに倒れて目を見開いて痙攣している紫月を見てショックを受け、どうすることも出来ずに泣いて動けなかったことを思い出した。

あの頃はたしか、その後、下校時間が遅れてしまい、危ないからって自宅まで送ろうとしてくれていた先生がわたしたちを見つけ、救急車に連絡し、命に別状はなかった。
でも病院で、固まって動かないわたしは気が動転した母親にひどく叱られた。
「なんで?!紫月を走らせたの?!」
「・・・紫月が靴を自分で履かなかったから・・・置いていった」
「なんでそんな意地悪するの!!お母さん今日は一緒に帰ってきてって言ったよね?!あなたは健康なんだから………紫月に優しくしなさい。紫月を守ってあげんとあかんのよ」
泣きながら訴えてくる母を見て、わたしの心のケアはされないんだと強く傷ついた。
「意地悪しなければ良かった。胸の中のもやもやを隠して生きていけば良かった」とわたし自身が、まだ無意識の中で心の扉を閉めるきっかけとなった事故に繋がる。
< 38 / 46 >

この作品をシェア

pagetop