もしも半分生きた人生をやり直すことができたら。
そのことに気づいた25歳のわたしは倒れる紫月に近寄り、動揺しながらも声を掛けた。
あの頃は紫月の病気を知らなかったから、うろたえてしまったけど。
何も出来なくて悔しくてたまらなかったわたしは、この事故から病気をことをしっかり勉強したんだった。
今なら対処方法も分かる。
「紫月!聞こえる?!お姉ちゃんの声聞こえる??!紫月!!」
震えながら紫月の肩を叩く。
思い出したよ。
この日、生まれてから初めて、ただ少し弱いだけの妹ではないということを思い知ったんだ。
紫月の痙攣しながら、泡を吹いている姿にひどく動揺して、何をしたらいいのかわからず戸惑ったの。
それなのに病院で母に言われた言葉に傷ついて、不甲斐なくて、自分が幼くて、悔しくて、この時の記憶を忘れるよう自分に言い聞かせてたんだ。

紫月に声を掛け続け、自分の心にも問いかけた。
「紫月!!紫月!」
ごめんね、紫月。
すごく弱くて、ダサいお姉ちゃんだったね。
意地悪してごめん。
置いてけぼりにしてごめんなさい。

そして、9歳のあの頃のわたし。
すごく怖かったね。
大丈夫だよ。
もう25歳になってしまったけど、今なら分かる。
誰かにあの時、心に寄り添ってほしかったよね。
怖かったね、大丈夫だよって。
紫月が自分の所為で死んじゃうかもって思ったね。
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