もしも半分生きた人生をやり直すことができたら。
気づくのが遅すぎるけど、助けるから。
家族と向き合うからね。

今のわたしならできる。
「紫月、ちょっとここで待ってて」
紫月の気道を確保し、一人で校門の入り口にある玄関まで走った。
緊急用に設置してある公衆電話を使い、救急車に連絡した。
「浜根結月といいます!妹がてんかんの発作で痙攣しています!息はしていますが、意識はありません。場所は〇〇小学校を少し降りた坂道です」
あの頃の、たった9歳のわたしにここまでできる訳ないよね。
ただ呆然と立ち尽くすか、泣き叫ぶしかできないよ。
もし、お母さんから紫月の病気のことを聞いていれば、咄嗟に職員室まで走って先生を呼んでいたかもしれない。
そこまでならできたかもしれない。
それなのにお母さんは、何の事情も知らないわたしに強く当たったね。

すごくショックやったよね。
傷ついたよね。
本当は強く抱きしめて欲しかったね。
怖かったね。
「大丈夫。大丈夫だよ」
紫月の元に辿り着いたわたしは、どうすることもできず、紫月の身体をさすった。
「もうすぐ救急車が来てくれるからね」
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