もしも半分生きた人生をやり直すことができたら。
サイレンの音が学校の前で鳴り止んだ異常事態に気づいた先生たちが駆けつけてくれた。

後から人づてに聞いたけど、救急隊のひとがびっくりしてたんだって。
連絡してきた人がまさか9歳の女の子でひどく落ち着いていたこということ。
着いた時には倒れている少女にうっすらと意識があり、嘔吐物が広がっていたが、顔を横に向け、唾や吐物が気管に入らないよう気道の確保がされていたこと。
ずいぶん、てんかんの知識があり、親御さんに教育されてるんだろうと思った、と。

病院に着くと、やはりわたしは母に責められた。
母に頬を叩かれる。
「結月!!あんた」
でも、もう絶対に逃げない。
家族と向き合うことに・・・・した。
あの頃、言えずに飲み込んだ言葉を吐き出すって決めた・・・。
「また紫月に意地悪したんでしょ!!?紫月は身体が弱いんだからいつも優しくしてあげなさいって言ってるでしょう??!」
「・・・・」
「なんであんたはいつもお姉ちゃんなのにそんなこともできないの?!なんで優しくしてあげられないの?!なんでいつも言うことが聞けないの?!」

身体が硬直する。
・・・お母さんが、こわい。



そうやっていつも決めつけて、力や言葉でわたしがお姉ちゃんでいなくてはいけないことを正当化されている気がした。
妹の前では強く、頼れるお姉ちゃんでいたい。
でも、お母さんやお父さんの前でも、強くて優しいひとでいなくてはいけないの?
弱みを見せることが許されないの?
あの頃のわたしの安らぎは自分の部屋にある姿見に移る自分だけだった。
どれほど、助けてほしくても。
悲しいことがあった日でも。
苦しくても、泣いてる自分の顔にしか話しかけられなかった。
その自分自身に「だいじょうぶだよ」って言ってあげることしかできなかった。
お母さんが怖くてしかたない。
吐き出したかった言葉が全部出てきてくれなくなった。
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