もしも半分生きた人生をやり直すことができたら。

「・・・せめて紫月の病気のことは教えてほしかった・・・」
「そんなこと、言おうと思ってたわよ。でも、今のあんたは子ともだから・・・結月が理解できる病気じゃないと思って言わなかったのよ」
・・・ほら、また決めつけた。
大事な病気の話をお母さんだけの妄想で。
教えてくれなかったのに、なんでわたしを責められるの？
「・・・び、病気に、理解ができないと思うなら・・・・せめてできる対処だけでも教えてほしかった」
それだけで知識が無くても行動はできるよ。
わたしは痙攣する妹を見て、動揺したし、ショックだったよ。
人より身体が少しだけ弱いってことだけしか知らなかったから・・・。
声も出せずに涙しか出なかったんだよ・・・。
病気のことを知らなかったら、普通に接するしかできないじゃん。
それなのに傷ついた心にも寄り添ってもらえない。
紫月が大事なのはわかるけど、わたしを蔑ろにするのは違うよ・・・。
「せめて紫月の病気のことは話してほしい・・・紫月が大事なんだったたら・・・ぐすっ・・・・っず・・っひ・・・もう・もうそれで良いから・・・・」

本当は謝ってほしい。
あの頃、傷ついたわたしに。
ごめんねって言ってほしい。
わたしより、結月が大事でも全然いいから。
それだけであの頃のわたしの心が救われたはずだよ。
だけど、自分の思いは伝えられなかった。

「・・・・分かった」
母親は謝れない人でもあった。
その日、わたしはやはり母とは分かり合えなかった。
理解し合えなかった。
本当の気持ちを吐き出すことが出来なった。
ただ、紫月の未来だけは守れた気がした。
目が覚めた紫月を助手席に、母が運転する車に乗せられた後部座席に座るわたしは窓の外を眺めながら、永遠に声を殺して泣いた。

ごめんね。
ごめんなさい。
成長出来なった自分を悔いて、過去の自分に謝る。
小さい頃のわたしのこころは永遠に癒えないのだろうと思った。