もしも半分生きた人生をやり直すことができたら。
プロローグ
まず、わたしの今日まで生きた一生の話をする。

19XX年、6月。
大阪ドーム・ナゴヤドームがオープンし、消費税5%に増税になり、たまごっちとポケットモンスターがバカ売れして、安室奈美恵の「CAN YOU CELEBRATE?」がシングル1位を獲ったあの時代に、わたしは母親の子宮から18時間という長期戦の末、この地球上に「浜根家の長女」として生み落とされる。

名前は浜根 結月(はまね ゆつき)
名前の由来は生まれてから一度も聞いたことはない。
家族構成はサラリーマンの父と、専業主婦の母、自分、2つ下に紫月(しづき)という妹の4人家族で、周りには畑と田んぼしかない田舎の一軒家に住んでいる。



「わたしの妹いじめんな!!」


物心がついた頃から、公園や幼稚園で意地悪されている妹を見つけると、いじめた相手を蹴り飛ばしたり、殴って追い払っていた。
その度に先生に怒られたし、母親は相手の保護者や園に頭を下げていた。
たまに母親から叱られている妹が可哀そうで、母をなだめるようなこともあった。
正義感が強く、妹思いだけど、周りからは暴力女と呼ばれていた……らしい。

小学校に上がった頃もそうだった。
登下校時は必ず妹の紫月と一緒に帰り、お昼休みも給食を食べ終えたら、すぐに紫月のいる支援学級に足を運んだ。
その行動をとらざるを得なかったのは、妹が小学校低学年に起きたある事故によって発覚した病気があるからで、「守ってあげなさい」と母親から何度も言いつけられていた。

そのこともあり、気づいた時には父も母も妹に付きっきりで、妹には優しく、何をしても怒らず、許し、穏やかに接するようになっていた。
わたしがしてはいけなかったことを彼女は許され、わたしが褒められるようなことは、彼女以上には褒めてもらえなくなっていた。
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