「会いたい」でいっぱいになったなら
話に気を取られている間に、駅の降りる側とは反対側に来ていた。
指す店先には、ブラックボードに【TESORO】と書かれている、イタリアンバルだった。
木製のドアを開けるとおいしそうな香りとざわざわとする話し声に、ジャズが流れている。
ダークブラウンで統一されたその店内は、見るからにおしゃれで、その雰囲気は『ちょっと一杯』ではなく、デート感を出していた。
店員さんに「二人」と言っているコウさんを見上げて、この人はやはモテる人なんだろうなあ。
そんな人を金曜の夜にしれっと誘うとか、なんか申し訳なくなってくるなあ・・・なんてことを思いつつ席に着いた。
お酒といくつかの食事を注文して乾杯をする。
「おいしいい~」
コウさんおススメのビールは初めて飲む銘柄で、少しフルーティで爽やかな味だった。
お酒と一緒に持ってきてくれたカプレーゼと生ハムの盛り合わせも食べていると、
「明石さんも呼ぼうか?」
とコウさんがビールを飲みながら言った。
「あー・・・今日、健デートなんですよ」
と早くなる心臓と動揺を気付かれないように、返事をした。
「え?美琴ちゃんと明石さんって付き合ってるんじゃないの?」
「いやいやいやいや」
驚き、前屈みになるコウさんの誤解に慌てて首を振る。
「健には大学時代から付き合っているそれはそれは美しい彼女さんがいるんですよ」
「そうなんだ。大学時代ってことは、明石さんとはその頃からの知り合いなの?」
「はい。大学に入ってすぐにあった新歓イベントで、フットサルサークルに勧誘してきたのが健だったんです」
指す店先には、ブラックボードに【TESORO】と書かれている、イタリアンバルだった。
木製のドアを開けるとおいしそうな香りとざわざわとする話し声に、ジャズが流れている。
ダークブラウンで統一されたその店内は、見るからにおしゃれで、その雰囲気は『ちょっと一杯』ではなく、デート感を出していた。
店員さんに「二人」と言っているコウさんを見上げて、この人はやはモテる人なんだろうなあ。
そんな人を金曜の夜にしれっと誘うとか、なんか申し訳なくなってくるなあ・・・なんてことを思いつつ席に着いた。
お酒といくつかの食事を注文して乾杯をする。
「おいしいい~」
コウさんおススメのビールは初めて飲む銘柄で、少しフルーティで爽やかな味だった。
お酒と一緒に持ってきてくれたカプレーゼと生ハムの盛り合わせも食べていると、
「明石さんも呼ぼうか?」
とコウさんがビールを飲みながら言った。
「あー・・・今日、健デートなんですよ」
と早くなる心臓と動揺を気付かれないように、返事をした。
「え?美琴ちゃんと明石さんって付き合ってるんじゃないの?」
「いやいやいやいや」
驚き、前屈みになるコウさんの誤解に慌てて首を振る。
「健には大学時代から付き合っているそれはそれは美しい彼女さんがいるんですよ」
「そうなんだ。大学時代ってことは、明石さんとはその頃からの知り合いなの?」
「はい。大学に入ってすぐにあった新歓イベントで、フットサルサークルに勧誘してきたのが健だったんです」