「会いたい」でいっぱいになったなら
「・・・まいったな・・・」
紘一はつぶやいた。
美琴を背負ってどうにかアパートの近くまで来たが、美琴は全く起きてくれない。
食事中に話した感じだとこのあたりだと思うだが・・・
「美琴、起きて、美琴」
と揺すっても「はい!はい!はい!」
というはきはきとした返事しかしないし、目を開こうともしない。
「美琴、家どれ?」
「はい」
明石さんに連絡しようかと思ったが、久しぶりと言っていたらしいデートを邪魔するのは気が引ける。
「はあ」
紘一は仕方なく美琴を自分のマンションに連れて帰った。
鍵を開け、部屋に入るとソファに横たえた。
美琴が裸足で歩いていたのを思い出し、お湯で濡らしたタオルで足の裏を拭いてやろうと、隣に座る。
「足、触るよ?」
「うう・・・」
本格的に眠ってしまったのか、返事もしなくなった。
ストッキングを履いているので脱がして拭こうかとも思ったが、さすがに酔いつぶれて眠っている女性のスカートに手を入れるのは憚られる。
ストッキングの上から足を拭き、怪我をしていないか確認し、
「よし」
と美琴の足を降ろして、立ち上がった。
足を上げていたせいで、美琴のフレアスカートが際どい所まで上がっていた。
酔って緩んでしまっている己の理性に発破をかけ、そのまま毛布を掛けた。
「俺、紳士だわあ~」
髪をバサバサとかきあげてバスルームに行った。