「会いたい」でいっぱいになったなら


「・・・まいったな・・・」

紘一はつぶやいた。

美琴を背負ってどうにかアパートの近くまで来たが、美琴は全く起きてくれない。

食事中に話した感じだとこのあたりだと思うだが・・・

「美琴、起きて、美琴」

と揺すっても「はい!はい!はい!」
というはきはきとした返事しかしないし、目を開こうともしない。

「美琴、家どれ?」
「はい」


明石さんに連絡しようかと思ったが、久しぶりと言っていたらしいデートを邪魔するのは気が引ける。

「はあ」

紘一は仕方なく美琴を自分のマンションに連れて帰った。



鍵を開け、部屋に入るとソファに横たえた。

美琴が裸足で歩いていたのを思い出し、お湯で濡らしたタオルで足の裏を拭いてやろうと、隣に座る。

「足、触るよ?」
「うう・・・」

本格的に眠ってしまったのか、返事もしなくなった。

ストッキングを履いているので脱がして拭こうかとも思ったが、さすがに酔いつぶれて眠っている女性のスカートに手を入れるのは憚られる。

ストッキングの上から足を拭き、怪我をしていないか確認し、
「よし」
と美琴の足を降ろして、立ち上がった。

足を上げていたせいで、美琴のフレアスカートが際どい所まで上がっていた。

酔って緩んでしまっている己の理性に発破をかけ、そのまま毛布を掛けた。


「俺、紳士だわあ~」


髪をバサバサとかきあげてバスルームに行った。
< 22 / 63 >

この作品をシェア

pagetop