「会いたい」でいっぱいになったなら
「どういうこと?」
美琴は自分の置かれている状況に驚きすぎて、頭が回らない。
見たことのない天井にシーツ。
しかも隣には誰かいる。
そっと動かないように目だけを隣に向けると、そこにあるのは筋肉のついた広い背中。
しかも上半身、裸。
なんで裸!?
この人の下半身を見る勇気は・・・ない!!!
とりあえず自分の姿を確認しよう。
寝ているこの人が起きないようにゆっくりと布団を持ち上げると、私はぶかぶかなTシャツを着ていた。
この人のTシャツに間違いないだろう。
ゆっくりとお尻を触ってパンツを履いていることを確認し、安堵する。
「ほっ」
って!
ほっじゃない!!
ここどこ!?
そして、この人誰!?
昨夜のことを必死で思い出す。
駅でコウさんとばったり会って・・・そのまま近くの居酒屋で飲んで・・・飲んで・・・今。この状態。
記憶がない!!
この状態は・・・お持ち帰り?
それでもって、この隣で寝てるのは・・・顔が見えないが、たぶんコウさん?
しちゃって・・・る?
いや、でも服着てるし・・・。
コウさんだし・・・コウさんならしないとも限らないし・・・。
とりあえず・・・トイレに行きたい。
そっとベッドから降り・・・・れない。
壁とコウさんらしき人物の間で眠っているので、ベッドから降りるためにはコウさんらしき人物を乗り越えていかなければならない。
でも一度トイレに行きたいと思うと、もう行かないわけにはいかない。
そっと布団から出て、なるべく気付かれないようにハイハイをするように足元の方から降りようと試みる。
「ん・・・起きた?」
コウさんの声に驚き体が固まる。
布団についた手の下で、コウさんがもぞもぞと動き、止まったのを感じた。
「あ!」
自分が四つん這いになり、おしりをコウさんに向ける形で止まっていてパンツを見られていることに気が付き、慌ててペタッと座り込んだ。
「ちょ・・・ちょっと御手洗、借ります!!」
あたふたと這い、「いてっ」と言うコウさんを乗り越え、ベッドから降りて寝室のドアを開け、それらしきドアを開ける・・・とそこは脱衣所だった。
慌ててドアを閉めると
「こっちだよ」
起きてきたコウさんが隣のドアを指さす。
「着替え出しておくから、シャワーも浴びておいで」
そういうと、ポンポンと優しく頭を撫で、コウさんはにこにこしながらもう一つのドアへ行った。
「・・・はい・・・」