「会いたい」でいっぱいになったなら
宣言通りに、コウさんは私を抱きつぶしたりはしなかった。


コウさんの家でお酒を飲み、おしゃべりをし、映画を見た。
めちゃくちゃ怖いホラーと泣けるヒューマンものとコメディ。


そして、気が付くと、ソファで二人、肩を寄り添うように眠っていた。

「変な姿勢で寝たから体が痛い」
とぶつぶつ言いながら、朝食を食べた。


その後、ロウリュウのあるスパに一緒に行って、二人で並んでマッサージを受け、
帰りになぜかバッティングセンターで撃ちまくってまた汗だくになった。



「ああ、疲れた!でも楽しかった!」
コウさんはアパートまで送ってくれた。

帰り際にぎゅっと抱きしめられ、
「好きだよ、美琴」
と囁かれた。

そして「おやすみ」とマンションに帰っていった。



コウさんの優しさに包まれて、私は傷ついているはずの胸に手を当てた。

健を想うとやはり悲しくなる。

けれど、コウさんと過ごしたこの二日間が楽しかったと思ってしまった。


弱ってる私にただただ優しかったコウさん。

昨日、抱かれなくてよかった。
もし、あのまま抱かれていたら、私に残ってるのは後悔しかなかっただろう。

抱きつぶすなんて・・・
「嘘ばっかり・・・ふふっ」


嘘つきで優しいコウさんに感謝した。



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