「会いたい」でいっぱいになったなら
「磯ヶ谷紘一です。青山と同じサッカークラブで、お世話になってます」
まず、コウさんは声を発した。

「あ、合田・・・じゃなくて、青山花です。もしかしてMFのコウさんですか?」
「はい」

「お噂は浩之に聞いてます。
『コウさん、まじすげえ。かっこいい』ってしょっちゅう言ってくるんですよ。
美琴とは大学のサークルが一緒で」

「あ、織部美琴です。初めまして。ねえ花ちゃん、青山って・・・?」
「うん。先週入籍して、青山花になったの。
この人が旦那さん」
と隣にいる人の腕に手を置いた。

「旦那さんの青山浩之です。よろしくね、美琴ちゃん」

男性は背が高く体脂肪率の低そうな筋肉質な日焼けをした男性だった。ニッっと笑うと真っ白な歯が見えて、THEスポーツマンって感じの見た目だった。



「美琴ちゃんはのコウさんの彼女さんなんですか?」

花ちゃんを見ていたコウさんは一瞬私を見た。

そして、その視線を二人に移し、
「はい。って言っていいのかな?あ、ご結婚おめでとうございます」

と軽くお辞儀をした。
私も一緒にぺこりとお辞儀をする。

「「ありがとうございます」」
二人は声を揃えてお礼を言った。

「そっかー。美琴にも彼氏さんができたんだー。しかもこんなにイケメンさん。
あ。この前健たちと飲んだ時に、美琴にも紹介したかったんだけど」
「あ、この間。・・・すみません。
あの、花ちゃんには大学の時から良くしていただいて・・・本当に、いつもお世話になってばかりで・・・。可愛くて優しくて憧れの人で・・・花ちゃんのこと、どうぞよろしくお願いします!」

「いやん。美琴。褒めすぎ。美琴、可愛いでしょ?」
「うん。噂には聞いてたとおり可愛いね。美琴ちゃん、今はなんだか緊張してる?」
「えっと・・・はい。ちょっと・・・」

「あははは、緊張しなくても取って食ったりしないから大丈夫だよ」
ぽんぽんと頭を撫でられる。

「アオ、近い!」
コウさんは私の肩を取って、青山さんから離した。

「あ。ごめん!
よく話に聞いてたから知り合いの気分だったよ」

そういえば、さっきも噂に聞いてたとか言ってた・・・。

「あの・・・話に聞いてたって?」
「ああ。浩之と健が中学からの友達でね、この間飲んだ時、美琴の話になったの。仕事、頑張ってるんだってね。健が褒めてた」
「そうだったんですね」



「それにしても、コウさんがヤキモチ焼くとこ、初めて見ましたよ。貴重だー」
「俺も初めてだ」

「ですよね、だって今まで「アオ!」」

「っと、それだけ美琴ちゃんが大好きってことですよねー。愛ですね、愛♡」
「うるさいよ」

「いやー!こっちが照れる!」


コウさんと青山さんが仲良く話している間、私は花ちゃんを見た。

花ちゃんの結婚相手が健ではなかったことにとても驚いている。

花ちゃんはにこにこと二人を見ていたが、私の視線に気が付いたのか、その視線を私に移した。

「美琴、今、幸せ?」
大きく頷いて
「はい。すごく幸せです」
と答えた。
「そっか。それはいいことだ」
花ちゃんはにこっとした。


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