先生と生徒の関係は卒業まで
■第1章 突然の繋がりの始まり
僕の休日の過ごし方は、書店巡りか図書館で本を読み漁ること。

やっぱり、本に囲まれながら本を読むのって最高だよね。

書店に行くかどうしようか迷ったけど、図書館に行くことにした。


今日は、どの本を読もうかな~

僕が図書館の敷地に入った時だった――



「宇佐先生! 助けて! お願い!!」
「えっ!?」

突然、腕を掴まれ、後ろに引っ張られる。
そして僕がよろけると、僕を引っ張った人物が僕の腕に自分の腕を絡めてきた。

「え、あ、君は田中さん!?」

僕の腕を引っ張ったのは、お嬢様の田中由美だ。

というか、近い近い。それに田中さんの……が、僕の腕に当たってるんだけど!?

「田中さん、ちょっと、あの……!」

僕は離れてって言おうとしたが、彼女は僕にしがみついたままスマホを取り出し、なぜか2人の写真を撮った。

え、なんで!?

田中さんは写真を撮ると、ようやく僕の腕を解放してくれた。

そして、写った写真を僕に見せつける。
その写真の僕たちは、とても親密そうな雰囲気だ。

「宇佐先生。この写真をばらまかれたくなかったら、私の話を聞いてください!」
「えぇっ!? 無茶苦茶だよ田中さん」
「宇佐先生は、私の話を聞いてくれない……と?」

田中さんはしょんぼりした表情をする。

「あ、いやいや、そうじゃなくって。あの……話なら聞くから。そんな風に脅さなくても」
「本当ですか!? 嬉しい!」

田中さんは、そう言うと、また僕の腕に自分の腕を絡ませた。

「わっ、ちょっと……」

僕はその腕を引き抜こうとしたけど、引き抜く時に、さらに彼女の……を刺激しそうで、ヘタレな僕にはできなかった。
かといって、このままでもいいと思ってないけど。

「宇佐先生?」

田中さんは、腕に絡みついたまま、上目遣いで見てくる。

田中さんは距離感が近すぎる……!

「ちょっと離れて。こんなところを、他の人に見られたら……!」
「えっ、それって、私を意識してくれてるってことですか!?」
「意識……? いや、そりゃ生徒とこんなふうに密着してたら……」
「密着? 私、よく南先生ともこんなことしてますよ」
「南先生は女性でしょ! 僕は男なんだからね」
「知ってますよー。女性には見えないもん。でも人目が気になるなら、あっちの公園に行きましょー。そこで話しますよ」

上機嫌な田中さんは僕の腕を解放すると、今度は僕の腕を掴んで歩き出す。

僕は図書館には入れず、図書館の横にある公園に行くことになった。

田中さんって、こんなに強引な子だったんだなぁ。
今まで、あんまり接点がなかったから知らなかったけど。



公園のベンチに座ると、田中さんは語りだした。

「実はね、数学の加藤先生に付きまとわれてるの」
「あの加藤先生に?」

加藤先生は、生徒からの人気も高く、色んな生徒の相談ごとに乗ってあげるような人だ。

僕とは対照的な人物なので、あんまり話したことはない。

「もともと加藤先生とも仲がよくって、友達と一緒にカラオケに行ったことがあったんだけど、その後で高級スイーツをご褒美に奢ってあげるよって言われたから行ったの。私は、友達も誘われてるんだろうなーって思ってみたら、そこには加藤先生しかいなくって」

それは加藤先生からデートに誘われて、田中さんがOKしたことになってるんだろうか?

だけど、先生と生徒は倫理的に付き合っていいものじゃないし……。


僕は心の中で首をかしげる。

「2人で会ってから、加藤先生に付きまとわれるようになっちゃったの。だから、宇佐先生に、学校にいる時はなるべく私の傍にいてほしくて」
「えっ、僕!?」

突然の流れに僕は驚く。

「でも、僕と一緒にいても、何も解決しないような……」
「あー! そんなこと言うの? 生徒が困ってるっていうのに」
「いや、でも……」
「それじゃあ……これ、ばらまいちゃおーかなー」

田中さんは、僕たち2人の写真を見せてくる。

「あ、それ……!」
「ね、私の卒業まででいいから。お願い」
「……田中さん。それはお願いじゃなくて脅迫――」
「何か言った~?」
「……いいえ。わかりました。わかりましたよ。僕の傍にいていいから」
「やったぁ! さすが宇佐先生は頼りになる~!」
「……はぁ」

こうして僕は、卒業までの1か月間。田中さんと一緒にいることになったのだった。
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