真夏の夜

キャンプ③

その日は朝から天気も良かった。

前の日に受付けの女の子には金曜日は資料整理が終われば帰っていいと伝えていた。

また新しいお客さんから契約を取れないかなと言ったので、任せる、施錠は忘れないようにと伝えた。

妻と秋はお揃いの麦わら帽子を被っていた。

キャンプの準備は数日前から妻と秋がしてくれていたようだ。

とは言っても今日泊まるのはコテージである程度設備も整っている。

僕が運転をし、助手席に妻が座った。

後部座席で圭太と秋が友達の話をしていた。

どうやら秋は夏休み前に彼氏と別れたようだ。

途中パーキングエリアで休憩をとった。

僕達と同じように家族連れも何組かいた。

煙草を吸っていると妻がコーヒーを買ってきてくれた。

妻と秋はソフトクリーム、圭太はコーラを買ったようだ。

キャンプ場について受付を済ませた。

妻と秋は食事の支度、圭太は釣り、僕は川沿いを散歩した。

自然の中はとても気持ちが良かった。

しばらく歩いてると1人の女性が川沿いの石に座っていた。

デザイナーの女性だった。

目を閉じ何かを考えているようだった。

その側ではもう1人の女性が絵を描いていた。

2人の後ろを歩いていると僕は躓きそうになり思わず声が出た。

デザイナーの女性はこちらを振り向きかけたが、また目を瞑った。

帰りは川の反対側を歩いた。

2人はまだそこにいた。

デザイナーの彼女が僕に気づいて挨拶をした。

僕は先日のお礼を言い頭を下げた。

家族の元へ戻ると3人はバーベキューをしていた。

妻がクーラーボックスから缶ビールを取り出し僕に渡した。

圭太が釣った鮎が焼かれていた。

僕らは団欒のひと時を過ごした。

夕方は僕と秋の2人でカレーライスを作った。

彼女が手伝うと言ってくれたのだ。

作っている間、妻と圭太は散歩をしたり僕らの料理を時々見に来た。

娘は野菜を切り、僕はカレーのスープを煮ている間焚き火の準備も同時にした。

火を焚くには少し時間がかかった。

上にお米を入れた鍋を乗せた。

調理以外の話はほとんどなかったが、ふと娘が思い出したように言った。

「お母さんが言ってんだけど、私の準優勝はお父さんのドライブのおかげだねって」

僕はカレーのルーが焦げないか注視しながら言った。

「秋の努力だよ」

そう言うと会話は止まった。

「美味しいカレーを作ろう」

僕がそう言うと彼女は笑顔になった。
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