iDOLの恋人~好きになった人は超有名人でした~
テオの横のジュリがその中で手を大きく振った。

「おじさん!」

わたしの前でお父さんが手をあげる。

その声に他の5人のメンバーも顔を上げるとこちらを見る。

そして、ジュリの合図でこちらに一直線にやってくるとみんなしてお父さんに頭を下げる。

「結城社長。こんにちは。お久しぶりです。」

そうなのだ。お父さんはSEVEN EYESデビュー前からの最大のスポンサーなのだ。

「みんながんばってるな。おい。莉奈。」

突然呼ばれたわたしはギョッとしてお父さんを見ると、コソッと「通訳してほしい。」と言われた。

そうか…。
そのためにわたしを連れてきたのね。

仕事でテオに会うなんてはじめてで内心、心臓はバクバクしていたけど、必死に平常心を装って対応。

SEVEN EYESのメンバーはテオと日本人のジュリ以外は、挨拶程度はできても、日本語はほとんどわからないはずだ。
お父さんはスポンサーとしてひとりずつに声をかけていき、短いながらも会話をしていく。
そのへんはすごいなと思う。
スポンサーとしてメンバーへの感謝を忘れない。
当初は売れるかどうかわからないような賭けだったのだろうけど、今や世界のSEVEN EYESだ。結城グループとして見る目があったということなのだろう。

テオのところまでくると、テオは日本語で流暢にお父さんに挨拶をした。

「結城社長。わざわざ足を運んでいただきありがとうございます。いつも感謝しています。」

「君が…」

「はい。イ・テオと申します。」

深く頭を下げた。

「そうか。なかなか…うん。」

もしかしてお父さん知ってるのかしら?
一瞬、そう思った。

テオが長く下げていた頭をあげると、お父さんはテオの肩にズシリと手を置いた。

「期待してるよ。いろんな意味で。よろしくな。テオくん。」

テオは右肩の重みに少し目を見開いていたけれど、すぐに笑顔で答えていた。

「ええ。期待していただいてうれしいです。期待通りにやってみせますよ。」

やっぱり知ってるのね…。
どうしたもんかと思ってたら、横から割り込んでくる声があった。

「おじさん。お久しぶりです。まさか莉奈も一緒だなんてびっくりしちゃった。」

テオを追いやるようにぐいっと体を前に持ってくる。

このまま2人が話しているとまずいと思ってくれたのかもしれない。
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