iDOLの恋人~好きになった人は超有名人でした~
「ごめん。樹里。」

「テオとなんかあったってこと?ったくアイツ。何考えてんだか。最近おかしんだよ。ミン・ユナとべたべたしやがって。」

ああ…
とまたぐさりと心臓をつきさされた気分になる。

やっぱりミン・ユナと恋人どうしなんだ。テオは。

「いいよ。今日は泊っていけよ。テオには俺から…。」

「いい。連絡しなくて。」

「え?けど…。」

どうせわたしは用済みだ。今頃ミン・ユナと楽しく過ごしてることだろう。

「明日、テオが仕事のうちに荷物全部とりに行くからいい。そのまま日本帰る…。」

「莉奈…」

あまりにわたしがむなしそうにみえたのか樹里がぎゅっと抱きしめて来た。
少しびっくりする。
樹里は日本人だからこういうスキンシップはしないものだと思っていたけど、韓国に住んでいるからスキンシップ激しくなったのかも…と少し思った。

「面倒な奴好きになったな。明日俺がテオのマンション送り届けてやるよ。テオは朝からドラマの撮影してから現場入るから、俺は直接現場だからさ。」

「ごめん。樹里。ありがと。」

「おう。まぁ久しぶりに作ってやる。俺の手料理。」

「ほんと?」

「ああ。そんなことくらいでしか慰められないからな。俺は。」

ぼそっと言った樹里の一言はわたしには聞こえていなかった。


その日は天才料理人樹里がつくったスパゲティアラビアータとじゃがいものビシソワーズを心行くまで楽しみ、樹里と子どものころの話をして、トランプして遊んで、樹里といっしょにリビングで大の字で寝た。

昔を思い出したみたいでとても楽しかった。

眠り落ちる寸前にテオのとびっきりのやさしい笑顔が夢に出てきて、たぶん「テオ」って寝言で言ったような気はするけど、それは樹里にはあえて聞かないでおこうと思った。

けれど、次の日は最悪な前日を過ごしたにしてはまだ快適な部類に入る寝起きだったのは樹里のおかげだと思う。

そのあと樹里の車でテオのマンションまで送ってもらったわたしは、テオのマンションより少し手前で樹里にはまたお礼をすると言って車を降り、回りくどく道を迂回しながらマンションへ入り、やっと自分の荷物を探し出し、なるはやでスーツケースにつめるとそのままマンションをでて、空港へ向かい、日本へと舞い戻ったのだった。
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