競馬場で騎手に逆プロポーズしてしまいました。

「ほら、せっかくだから会わなきゃ!」

由良先輩に連れられ来たのは、ウィナーズサークルという表彰式をする小さな場所。

そこでは表彰式後に騎手がファンに握手やサインをしてた。

さくらくん…桜宮騎手もテレビカメラの前でインタビューを受けた後、ファンサービスをしてた。

ドキンドキン、と心臓がおかしいくらいに鳴る。あ、リップは塗り直したけど。髪型どうかな?日焼けは…あ〜…もっとかわいいカッコしてくるんだった!と考えても後の祭り。

なんだか汗がすごいし、寒くもないのに体が震えてくる。緊張しまくりで、手汗までかいてきた。

(な、なにを話そう……って言うか、私のこと覚えてるかな?わかるかな?)

不安にもなる。だって、もう20年近く会ってないんだもの。そんな諸々は桜宮騎手が近づいて、彼の懐かしい匂いを感じた瞬間ーー
すべて頭から消し飛んで、とんでもないことを口走ってた。

「……あ、あの……結婚してください!」


懐かしい人と馬を前に感激して感極まっただけなのに。久しぶり、と言うはずの口は、なぜか逆プロポーズの言葉を口走ってた。

「……は?」

目の前の桜宮騎手は、当然ポカンとした顔。周りはシーンと静まりかえって……。

場所は日曜日の競馬場。大勢の観客と、テレビカメラと、マスコミの前で!

注目度抜群の、勝利ジョッキー相手に。

やらかしました、花井 さくら(はない・さくら)28歳ーーなぜ、こうなった!自分!!



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