競馬場で騎手に逆プロポーズしてしまいました。
(え……っ、さくらくん……一体なんのつもりで……)
正気とは思えない宣言に、私の心臓は爆発しそうだ。こんな大勢の前で恋人宣言なんて……きっとスマホで撮影もされて、拡散されたら取り消しなんてできないのに。
「え……あ、な……ほ、ほんもの?」
さくらくんの堂々たる宣言に伊東さんがあたふたしてるなか、仕事を終えたらしい課長が玄関から出てきた。
「なんだね、この騒ぎは……あ!あ、あなたは……桜宮騎手ではないですか!!」
パッと目を輝かせた課長は、40代とは思えないほど軽やかな足取りでこちらへ駆け寄る。由良先輩とよく競馬の話をしてたから、やっぱり詳しいんだ。
「今日は、どうなさったのですか?弊社になにかご用件でも?」
揉み手しそうな勢いで愛想よく訊ねる課長に、さくらくんはにっこり笑って言い切った。
「いえ、ただ恋人を迎えに来ただけです。一瞬たりとも離れていたくはありませんからね」
そして、さらに強く私を抱きしめてきたから。頭が茹で上がるくらいに熱く感じた。