競馬場で騎手に逆プロポーズしてしまいました。
ケッ!と舌打ちが聞こえて慌ててそちらへ目をやれば、やさぐれた樣子で由良先輩がビールジョッキを飲み干した。
「よかったワネ!あ~、独り者には目に毒だわ~」
「……ご、ごめんなさい!先輩」
急いで謝ると、不機嫌だった由良先輩は、急ににんまり顔に豹変。
「……なぁんてね!かわいい後輩の幸せを素直に祝えない心の狭さは持ち合わせてないわ!」
ダン、とビールジョッキをテーブルに置くと、由良先輩は追加注文をした。
「ほら、お祝いなんだからじゃんじゃん飲んで!今日はお姉様がおごってあげるから」
上機嫌でビールジョッキを掲げる由良先輩だけど……
「ありがとうございます……でも、給料日前なのに大丈夫なんですか?」
おごりはありがたいけど、懐事情が心配になる。給料日まであと1週間…いつもこの頃にはお金がない!って騒いでるのに。
「あ、平気平気!ほら、アタシ日曜日万馬券取ったじゃない!128倍のアケボノソウ単勝1000円!!」
由良先輩が得意げに単勝の馬券を披露する。
「買ってくれたんですね。ありがとうございます」
さくらくんが頭を下げると、由良先輩はガハハ!といつもの馬鹿笑い。
「いいって、いいって!桜宮騎手も勝ってくれてくれて、こちらこそありがたいわ」
「あ…でも」
さくらくんは当然の指摘をした。
「この馬券……競馬場か場外馬券売り場でないと払い戻しできませんが」
ピキッ、と由良先輩が固まった音が聞こえた気がした。
「……ごめんなさい…今日はワリカンでお願いします……」
由良先輩のうなだれ方は気の毒になるほどでした…。