競馬場で騎手に逆プロポーズしてしまいました。


厩舎の中には数mごとに小さな区切られた部屋があって、そこが馬が過ごす個室…馬房。出入り口には金属製の扉がある。

普通の一般人は入れないけど、今回は無理を言って見学させてもらった。もちろん、感染症予防に消毒やら何やらしたし、注意事項もたくさん聞いてる。


「わぁ……アケボノソウ!はじめまして」 
「ヒヒィ」

なんと、さくらくんが特別に、と栗木調教師と厩務員(きゅうむいん、馬の世話をする人)さんの許可を得て、アケボノソウに会わせてもらえました。

アケボノソウはハルイロノメロディーと違い、人懐っこいようで初対面の私にも顔を擦り寄せてくれた。

「アケボノソウは懐っこいやつなんだ。パドックまでは大人しい性格なんだけど、レースになるとじゃじゃ馬で他の馬に喧嘩を売りにいくんだよ」

厩務員の鈴木さんにそんなエピソードを教えてもらえて、なんだか笑っちゃう。

「そうだな。新馬戦でも1番人気の馬に噛みつきに行ったからなー」

さくらくんもしょうがないな、という樣子で呆れ顔だけど。アケボノソウはなんだか得意げに見える。

「アケボノソウ、その調子で他の馬を負かせちゃえ!だって君は女王様だからね」
「ビヒヒーン!」

アケボノソウはまるで私の言葉に返事するように高らかに嘶いて、周囲はドッと笑いに包まれた。

「こいつ、絶対わかってるよ!」
「ほんとだ!女王様だよな」

アケボノソウのたてがみと首すじに触れてみる。あたたかい……。当たり前だけど、呼吸もしてて……生きてるんだ、と感じられた。

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