競馬場で騎手に逆プロポーズしてしまいました。

「……すまん、さくら」
「ううん、いいよ。お父さんが無事でよかった」

救急車で搬送されたお父さんは、狭心症で入院が必要になった。心臓の3つの大切な血管のうち、真ん中がかなり狭くなってたらしい。

「普段から頑張ってたから、休むといいよ」

地元の本社に戻ったお父さんは、かなりの激務をこなしてた。午前様や休日出勤は当たり前で。責任ある立場だから、経営陣と部下との板挟みで大変そうだった。

「お父さん、会社やめてもいいよ」
「さくら……それは」
「命の方が大切でしょ?私だって働いてるし…貯金ならあるから大丈夫よ」

なるべく明るく笑って見せた。大丈夫、と思ってほしくて。

お父さんは何も答えなかったけど…。

(大丈夫……どうにかなる……ううん、私がなんとかしないと)

お父さんは手術が必要になる。仕事が始まったら病院に通ってお世話して、就活もしないと……治療費は貯金でなんとか……でも。

(…私になんとかできるの?……さくらくん……お願い、そばにいて。ううん……せめて声を聴かせて)

その日の夜に自宅のアパートでさくらくんにライムを送ったけど、既読が付かない。

怖くて、何度も送ってしまう。また私の悪い癖が出てしまった。
2日で30通ほど送ったのに……

さくらくんからの返信は、無かった。



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