競馬場で騎手に逆プロポーズしてしまいました。


『明日なら少し時間は取れそうだから会えそう?』

さくらくんからそんなライムが来たのは、お父さんの入院から1週間経ったころ。複雑な気持ちだけど、やっぱり恋しくて。

(さくらくん……私がこれだけ大変なのに一言もないの?それにあの女性と…会って話さなきゃ……ううん、今は逢えるだけでいい)

競馬も夏の今はローカル開催だから、小倉、札幌、新潟とかなり遠距離の移動になる。そんななか私のために時間を割いてくれたんだ。喜ばなきゃ。

「久しぶりなら、思いっきりオシャレしていきなさいよ」と、由良先輩も服を貸してくれた上に支度を手伝ってくれた。
少しでも大人っぽくなりたくて、ワインレッドの体に合ったワンピにネイルもメイクも髪型も、より気配りをして。

なのに……。

『ごめん!ちょっと行けそうになくなった。埋め合わせは必ずするから』

さくらくんからそんなライムが来たのは、待ちあわせ時間から3時間過ぎた後でだった。


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