競馬場で騎手に逆プロポーズしてしまいました。

そして、新潟2歳ステークスが明日という土曜日。決定的な出来事が起きた。

お父さんが久しぶりに気分がよくて、由良先輩と病院の庭に散歩に行った。

最近の経過はよくて、手術より投薬で様子を見ましょうと言われほっとしたところ。退院の目処もついて気が楽になる。

仕事も課長が口利きをしてくれて、今より少し遠くなるし収入も減るけど。子会社へ転籍という形でなんとかなりそうだ。

(よかった……お父さんも由良先輩といると本当に楽しそう)

私ももう子どもじゃない。由良先輩とお父さんがいい雰囲気というのは感じてた。
2人が付き合うなら賛成だし、応援したい。

「はあ…疲れた」

思わずため息を漏らす。アケボノソウのレース頑張ってね、とライムを送ってもさくらくんから音沙汰なし。もう、私のことはどうでもいいのかもしれない。

一度家に帰ろうか、と病院の玄関へ向かってる最中、さくらくんらしき姿が見えてドキン、と心臓が跳ねた。

(さくらくん…忙しいのにわざわざ病院まで来てくれたんだ!)

思わず駆け出したけど、その足はすぐに止まる。

あの美女がさくらくんの隣にいて、しかも腕を絡めてた上にこんなことを言ってたから。

「きゃー!かわいい指輪」
「おい、あんた…離せ!」
「ほら、わたしにピッタリ!かわいい」

誇らしげに指輪を持ち上げて見せる美女に、さくらくんはなにか言ってたけど。私の耳には入らない。

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