競馬場で騎手に逆プロポーズしてしまいました。
「さくらっちの出身はN市だったわよね?」
「え……はい」
慌てて頷いた私に、由良先輩は競馬新聞の一点を指差す。
なんのことだろう?と疑問に思いながら先輩の指先を見ると、細い枠にごちゃごちゃといろんな文字や数字や記号が並んでる。
首を捻りながら慎重に目で追っていくと……。
1番右端の騎手と書いてある欄に、桜宮 翔馬という名前が書いてあった。
「桜宮騎手ね、デビュー13年目の31歳中堅騎手で、N市出身。中学時代に、子ども競馬大会で準優勝してこの道に…って。どう?色々符号が合うと思わない?」
「く……詳しいんですね」
「そりゃもう!馬と騎手のデーターは任せて!勝つために日々収集しているのだから」
オホホホ!と高笑いする由良先輩を尻目に、競馬新聞を手にした私の心臓は高鳴るばかり。
(さくらくん…あなたなの?本当に騎手になったの?)
男の子……さくらくんは、全国大会で準優勝した時には悔しがって、“騎手になったら絶対見返してやる!”って、優勝した男の子の写真を睨んでた。
まさか、本当に騎手になってたら……
(嬉しいな……)
何を隠そう、私の初恋はさくらくんだった。いつも生き生きと馬の背にまたがる彼はカッコよくて……ヒーローみたいだったから。