競馬場で騎手に逆プロポーズしてしまいました。

パドック(レース前に馬の状態を見せるための下見所)で、アケボノソウを見た時には驚いた。

ハルイロノメロディーとうり二つの栗毛(薄茶色)で、靴下を履いたような白い四肢も、金色のたてがみも、まっすぐな白い流星(額の模様)も。
何もかもが生き写し。

「とまーれぇ!」

騎乗の合図が出て、パドックをぐるぐる回っていた馬が停まる。「礼!」という号令で一列に並んだ騎手が一礼すると、小走りでそれぞれの騎乗馬に駆け寄っていく。

アケボノソウは……だめだ、一番遠くて見えない。
でも、騎乗した後はそのままパドックを一周する。逸る気持ちを抑えながら待っていると……

アケボノソウの背に乗った騎手が見えてきた瞬間、頭のなかが真っ白になった。

「さくら……くん!!」

間違いない……見間違えるはずがない。
額にうっすら残った傷痕も、ちょっと太めの眉も。全部覚えてる。

さくらくんは、夢をかなえて桜宮騎手となってたんだ!

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