極秘懐妊だったのに、一途なドクターの純愛から逃げられません
最近の病院はたいていが電子カルテを導入している。
ってことは、院内のパソコンさえあればいつでもどこでも状態を確認できる。
もちろんアクセスは医療スタッフに限られているけれど、医者である俺に見れないカルテはない。
それでも、俺は美貴さんのカルテを見ようとは思わない。
泉美さんから聞かされたのも、美貴さんが妊娠しているらしく腹痛を起こして病院を受診しているってことだけ。この状況で知らせるってこと自体色んな想像をするけれど、はっきりとしたことは何も聞いていない。
やはりこういう話は本人から直接聞くべきだろうと、俺も細かく詮索はしなかった。

さあ、どうしたものか。
まずは受診の段取りをつけないといけないんだが・・・

「もしもし」
「すみません、高城です」
「あら、太郎君どうしたの?」

院内PHSで電話をかけたのは産科部長。
父さんの友人で、俺も子供の時からかわいがってもらっている人のいいおばさんだ。

「すみませんが診察をお願いしたい妊婦がいて」
「ふーん、どこかからの紹介?」

普段から小児科は産科からの依頼を受けることが多いが、小児科から産科にお願いすることは少ない。

「違うんです、個人的な知り合いでして・・・」
「はぁ?」

だよな、やっぱりその反応になるよな。
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